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News Letter Vol.012
「これからの公共図書館の電子化モデルを考える」フォーラム
— 「公共図書館等への電子書籍配信に係る課題整理研究会」報告会 —
【内容】
(1)研究会における検討結果について
(2)コメントと討論
司会:高野明彦氏(国立情報学研究所 教授)
討論者:
浅野隆夫氏(札幌市中央図書館情報化推進担当係長)
植村八潮氏(専修大学教授)
北川雅洋氏(インプレスホールディングス取締役)
(3) 会場からの質疑応答、意見交換
【日時】2013年07月30日(火曜)13時30分-15時30分
【場所】
日本教育会館 8階第二会議室
【主催】「公共図書館等への電子書籍配信に係る課題整理研究会」
(座長:高野明彦 国立情報学研究所教授)
【後援】電子出版制作・流通協議会 環境整備委員会・公共ビジネス部会
■講演1
●(1)研究会における検討結果について
・高野明彦(国立情報学研究所 教授)
「公共図書館等への電子書籍配信に係る課題整理研究会」を4月に発足。研究会の目的は、公開ブレストのような形でどのような問題意識を持っているか、どこがクリアされれば進めるのかを情報共有することです。メンバーは、図書館の方・電子書籍制作に関わる方・出版社の方・法律の方などいろんな方に集まっていただき、それぞれ所属から離れて、できるだけ自由な立場で個人の意見を出していただくようにお願いしました。
今回の報告は、あくまでも課題整理とその解決の方向性を示すぐらいの議論です。この報告を受けて、出版界や図書館界の方々が協力をして、実際に電子書籍の配信ビジネスモデルが作られることが望ましいと考えています。
・浅野隆夫
札幌の図書館は、来年度26年度の秋ぐらいから電子書籍をスタートしたいと思います。実証実験は23年度から行っています。
市民の方に協力をいただいて、パソコン・タブレット・スマートフォンで450名が参加した実験を約半年続けました。「改善すべき点」を伺ったところ、半分がコンテンツで読みたい本がない。28%の方がシステムを改善すべきという結果になりました。
札幌市内の出版社30社に出版社説明会を開催しました。提供された底本を図書館側で電子化する形です。これにより、16社から200タイトルの協力を得られました。
私は、実験だから参加してくれたという面があると思います。地域の出版社は、図書館に本を提供すること自体が地域貢献になります。また、ロングテールでの販売を期待しています。公共として、地域に関する出版物・すばらしい地域発の出版物があるということであればPRできます。そこでの連携をしたいというお話がありました。
次の年度は「さっぽろ電子書籍流通検討会」で、26年度に電子書籍を始めるに当たっての調達ルール作り、出版社とどう協力できるかを話し合う機会を設けました。これがきっかけで、「北海道デジタル出版推進協会」という社団法人が立ち上がりました。自らの電子化や販路の開拓・図書館向けビジネスの構築をすすめています。電子の地域書籍を図書館向けに調達する一元的な窓口になることを期待しています。
札幌の図書館の電子化のテーマは地域です。「本の館(ほんのやかた)」だけでは維持していくのは難しい時代です。どのように社会と繋がっていくのかが大事だと考えています。教育委員会の一員でもあるので、学校教育に用意した電子書籍の利用という部分で、iPadを持参して調べもの学習の授業で電子書籍を使ってもらいました。
今までの情報教育というと、ソフトとかハードが主体でしたが今後は、コンテンツが非常に大事です。ここを図書館・地元の出版社が提供する形があると思います。
学校教育で求められているもののニュースを出版社に流すことで、出版の気運が高まるのではと考えています。
図書館自らが、ボーンデジタルの電子書籍を作ることもあると考えています。「出版体験プロジェクト」では、札幌の中高生が住む街を誇れるような写真集として、「さっぽろ街図鑑」を紙・電子版で作りました。
私たちが今までしてきたのは、札幌の出版社とどのようにコンテンツを調達していくか、図書館自らが電子化をして地域の資料を守っていくか、市民参加でリアルタイムの地域資料をボーンデジタルで作る、という三つを推進することです。
・北川雅洋(インプレスホールディングス取締役)
出版社の想いは「手がけた作品をできる限り多くの読者に届けたい」というものです。そういう意味では、公共の図書館は非常にありがたい存在です。
これまで出版の出版・流通エコシステムはとても良く機能してきましたが、それが今、制度疲労の時代をむかえ、黒字経営が困難にする要因となっています。また、電子書籍については、まだ市場が小さく投資フェイズであり十分な利益が得られていません。
出版社の中には電子書籍の公共図書館配信は未知のリスクがあると思っている人が多くいます。出版社は、組織全体として動くというより、どちらかというと個々が判断をして行動する組織です。各編集部の担当者が、越えられると思えるハードルになれば、段階的にコンテンツの提供がスタートできると考えています。
公共図書館における電子書籍の取り扱いにおいては米国の方が進んでおり、76%の図書館が電子書籍を提供しています。紙を全く置いていない公共図書館(Biblio Tech等)もあります。
電子図書館システムベンダーでは、OverDrive・EBSCO・3M・INGRAMほか数社があります。公共図書館の電子のトップページには、OverDrive・EBSCO・3Mと複数のシステムが入っており利用者が選択可能となっているものもあります。OverDriveは、全米で9割以上のマーケットシェアを持っていると言われていますが、他社のシステムが残りの1割の図書館にしかないという訳でなく、前述のようにシステムを重複利用している図書館もあります。現在は、1社しか入っていないところの方が少なくなっています。
OverDriveが今のところ世界ナンバーワンであり、合計22,000館に配信しています。米国の公共図書館は1万弱であり、陸・海・空軍の図書館なども彼らの重要な顧客となっています。
発表によると、本の発見回数は1年間に60%増えており、ディスカバビリティに貢献しています。また、モバイルアクセスが47%、スマートフォン用のアプリは、年間1,600万ダウンロードされています。
American Library Association(米国図書館協会)は、ビジネスモデルを定義しています。
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Single User Model 1ライセンスで、1度に1人が借りられる(紙の本と同様)
Limited Number Loans Model 貸し出し回数に上限が定められている
Delayed Sale Model 新刊発売から一定期間貸せない
In Library Check Out Model 来館しないと借りられない
In Library Use Model 館内貸し出し限定
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それ以外に活用されているモデルで“Buy it now”ボタンというものがありますが、個人的にこの試みはとても気に入っています。買いたくなった場合は、すぐにAmazonやBarnes & Noble等に行って購入できますので。実際に購買に結びつくケースが多いのは、図書館に3冊のライセンスがあるが、待ち人数が100人いるような場合です。興味のある本なら待っているよりも、買ってしまおうということで販売に貢献しています。
電子書籍と読者の出会いの場は必要ですが、今の日本には正直、存在していません。電子書店の経営とは利害が反するところがあります。電子書店において他社との競争に勝つには、売れ筋商品をより多く露出してシェア争いに勝ち、採算がとれるレベルまで売上規模を上げる必要がありますから。ロングテールやアーカイブもの、そして売れるか分からない新刊などを露出させる余裕がない。そこで、他の場所に期待する形になります。日本は、紙の本の流通チャネルが非常にすばらしく、ディスカバビリティが高い環境なのでよけいに電子書籍の環境が劣って見えます。
読者と作品のマッチングの機会が欠けていて、図書館のプラットフォームを使って、出会いの場をなんとか助けてもらえないだろうか。“Buy it now”などで、ビジネス上のお手伝いもしてもらえないだろうかと考えています。
既存の業界、既存のプロフェッショナルがいる中で、全く新しいことをやるべきときは、「UNLEARNING(アンラーニング)」を学ぶことが大切です。既存の常識や、ノウハウ・プロフェッショナリズムなど、一度その道の常識を横に置いて話し合えば、必ず解決策が見いだせると思っています。
・植村八潮(専修大学教授)
出版学としての立場からお話します。
日本出版学会設立時の中心人物で先月亡くなった清水英夫氏は、「表現の自由」運動の中心でした。また、知る権利の確立を行い、情報公開法の制定等に尽力した方です。清水先生が出版学会を作るときに仰ったのが、「出版学は表現の自由の理論をきっちり作り上げなければならない」ということです。もう一つは、「出版を産業で見ていかねばならない」ということです。なぜかというと、お金が回ることで表現の自由が確保されるからです。
書店経営・取次・出版社・著者と、すべて読者が本を買った経費で賄われています。新刊点数が現在8万タイトルで、一人一人が買った本だけで出来上がっています。これがとても重要で、表現の自由を確保する唯一絶対の方法です。私たちが本を生み出すことによって、私たちが自由に発言することが担保されています。
書店が一つしかない、放送局が一つしかないとなると、表現の自由は担保されません。自由な活動の中で流通チャネルが生まれていくのが重要です。
清水先生がよく言ったのは、表現の自由は流通の自由で、流通がきちんと確保され、読者がコンテンツにたどり着くことが大切です。
書店で本を買う以外に、作り上げなければいけないのが図書館だと思っています。図書館の役割は、表現の自由とセットである「知る権利」の保障として図書館があるのではないかと思います。
大英図書館でマルクスが資本論を書いた、コリン・ウイルソンが野宿をしながら図書館の本を読んで、「アウトサイダー」を書き上げたとかの伝説があります。図書館が果たす役割は誰もが情報にアクセスできることです。
電子書籍を出版社が作り上げていけば、電子図書館サービスは民間サービスになっていくと思います。公共図書館が以前ビデオを貸し出していましたが、豊かなビデオレンタルを享受できるのは有料の民間サービスです。すべて公共図書館で、無料で貸しだしていたらこれほど広がりはなかったと思います。私たちが対価を払うことで成立するモデルは絶対にあり、それが普及します。
公共のアーカイブは絶対に必要です。民間サービスは潰れる可能性があるため、きちんと公共アーカイブに移しておく必要があります。納本制度の義務があることは、知る権利の担保として絶対に必要です。
納本という義務の枠の中で、出版社は電子書籍も公共アーカイブに預けておくというのは必要です。この使い方を議論するのが、今回の研究会だと思います。
図書館サービスを限定的にして、アメリカのように予約したら有料にする・ビデオは有料など、絶対的な無料原則は見直す段階に来たのではないかと思います。
知る権利を担保するために、公共アーカイブに同じものを置いておきつつ、当面は私たちのお金で回す仕組みを作り上げます。豊かな関係は、私たち一人一人が本を買うという関係が続くことで、理想的な未来があると思っています。
●(2)コメントとディスカッション
・高野明彦
図書館が本質的に役に立つサービスとして、みんなに電子的読書を経験させる空間として定義し直すことが出来るのではないか。有料・無料などいろんな組み合わせで、難しさもあるかもしれません。
・北川雅洋
有料・無料のところで、図書館と有料サービスというのはどういうイメージで考えていますか。
・植村八潮
元々日本が、公共図書館・市民図書館運動の中で、ある種の無料原則が立ち上がりました。そのことによって果たしてきた役割は、非常に意義があったと思います。
無料原則を拡大するのではなく見直す。今まで出来なかったサービスの部分は有料という視点を持ち込んでいいと思います。有料サービスは、民間側からの方がレンタルビデオのように普及し、良いサービスが生まれます。
・北川雅洋
ということは、公共図書館では、有料レンタルをイメージしていないと捉えていいでしょうか。
・植村八潮
公共図書館における、有料という枠組みに移っていいと思います。
公共図書館の無料原則は、所蔵している図書資料です。データーベース契約は所蔵ではないので、有料にするというのは立て付け上成立します。現状、誰もやっていないだけで、公共サービスは全部が無料ではありません。
・高野明彦
有料サービスというのは、図書館という場所にこだわらずにスタートしたらいい。それが、公共図書館という場所も含めて展開されることもあるということですね。
・浅野隆夫
民間のレンタルが始まることも予測しています。公共図書館と民間とは収集するコンテンツが違うと思います。私たちは、違う観点になるので、自然と棲み分けが出来ると思います。利用者からなんらかの費用を徴収するのは、図書館法の立て付けとしては可能ですが、ユーザーの意識や法の精神となると、利用者に負担を強いるので今は難しいと思います。実証実験などの形でユーザーの意識を聞いてみたいとは思いますが。
・北川雅洋
OverDrive社のシステムは、欲しいという人には公共図書館が販売するのではなくて、AmazonやBarnes & Nobleに飛ばして販売に結びつけるという方法をとっています。そこで公共図書と民間事業者との線引をしています。そこをやってしまうと、民間事業者との競合になり、公共性や民業の圧迫という点で微妙な状況になります。やはりどこで線を引くかが、一つ大切なことだと思います。
・植村八潮
コンテンツの棲み分けは現実で起こっています。マンガ喫茶は、有料マンガ図書館です。こういう形で、電子の中では違う棲み分けが自然に出来ると思います。
・浅野隆夫
公共図書館がコレクションしたい本と棲み分けが出来るので、どんどんやっていただければと思います。
返却にきた利用者に購入したいと言われることがあります。いい本だから、買いたいというのは、すごくナチュラルな話です。事務手続き上難しいのであれば、カウンターの横にEコマースの端末があって、そこで買う。待ち人数が多いなら、買う“Buy it now”ボタンを選択するのは自然なことです。
お願いというか提案は、図書館側のOPAC(蔵書検索システム)のAPIを公開するので、民間側のサイトでやっていただけないでしょうか。
図書館も行政の一部で、買うボタンを付けた先がどこかについては手続きが必要になりますが、民間側のサイトで、札幌の図書館で借りられる本の情報が見られる。買うというボタンもあって購入できる。こういう形であれば、図書館界としても抵抗なく受け入れられると思います。
・高野明彦
公共図書館に限らず、既存の枠組みじゃないところに広げようとしたとき、パッと利用できるようなサービスメニューをいろんな方々が用意して提供しておくというのはいいことだと思います。
・植村八潮
そこに至るプロセスとして、紙の本を踏んで、電子に行くというのが当面はかなり重要だと思います。
私たちの読書慣習からすると、本をパラパラとめくってみて気に入るというのがあります。画面サイズだけの問題ではないと思います。
・高野明彦
ディスカバラビリティを飛躍的に高める方法についてどうでしょうか。
・北川雅洋
紙の認知性が高いのは間違いないので、活用するのがいいでしょう。本の市場は徐々に小さくなっていますが、発行点数は増えているので紙でも同じ問題が起こりつつあります。
米国のGoodreadsのように、書評や本に関する情報が一カ所に集まる場があれば、紙も含めてマッチングを促進します。
・高野明彦
コミュニティというのが本に限らず、音楽にしても、映画にしても、自分の好みにあったモノを探すというのに有効であるというのは既に実証済みだと思います。
電子ならではのディスカバラビリティを上げる。紙に依存しない、新しいものはあると思います。
もう一つ議論したかったのは、電子書籍コンテンツの永続性です。図書館の場合、今入れたものが10年後に蔵書として提供できるのか。
・浅野隆夫
その問題は厳しいです。今の状況を考えると、所蔵にあまりにもこだわると先に進めない。逆にフォーマットが朽ちてしまったらどうするかという問題もあります。
・高野明彦
サービスが永続性を担保出来ないと難しいと思います。
・北川雅洋
American Library Association(米国図書館協会)は、OverDriveを含めた図書館システムプラットフォーマー数社にある要求をしています。OverDriveから仕入れた商品を共有している場合で、例えば3Mがすばらしい読書システムを持ってきた。そのときに、一度ライセンスを受けた電子書籍タイトルを別の貸し出しシステムでも利用できるようにと要求しています。一度ライセンスを受けて、権利を獲得したタイトルのある程度の継続性・永続性はシステムで解決すればいいのです。電子書籍のライセンス履歴を第三者機関で保持していれば、より簡単に出来ると思います。
・植村八潮
ユーザーサイドに立ったポータビリティのところに行くと、技術やデバイスなど難しいところがあります。少し引いて、理念に戻れば、絶対的なアーカイブを作るというのを前提にするべきではないでしょうか。
私たちの表現の自由は、表現する・流通する・アクセスするというところまで入れてはじめて完結します。アーカイブへのアクセスをどう担保するかです。民間サービスにアーカイブしろというのは、議論が進まなくなるような気がします。
・高野明彦
技術的には、DRMのかけ直しです。ソースファイルがきちんとどこかにある。出版社がそういう意識で電子化を進めていれば、技術的にそれほど難しくはないと思います。
EPUBのような共通フォーマットが出てくるのは、いい兆しかもしれません。元になるものを、出版社が意識して、どこかのサービスにロックインさせない。意識的に平たく、どんな書店でも自分たちの紙の本が売られるというのと同じことを電子でも担保する意識が重要かと思います。
・浅野隆夫
コンテンツによるというのもあります。我々がどうしても守らなければいけないコンテンツは、汎用性のあるデータの形で、私たちのハードディスクの形で格納するというのはあります。
・植村八潮
出版社の中で、今は紙の本を作って電子化という流れがあるので、単行本を出した出版社と文庫本を出した出版社があり、どれをベースに電子化したのかという、解決していない問題もあります。
ビジネス的に解決できるのは、商習慣などの枠組みを見ておかないと進んでいかないと思います。
●(3)会場からの質疑応答、意見交換
・会場
図書館の購入費がどんどん減らされています。その中で、紙と電子の棲み分けをどうするのか。
・浅野隆夫
電子を使ってなにをやりたいかです。ある図書館は、稀少書・貴重な書籍を見せるのは、痛んで大変なのでそれを集中的に電子化して、電子で見てもらうことを考えているところらしいです。たとえば郷土資料や美術系のものです。札幌の場合は、地域を発信していくとか、学校教育に地域のマテリアルを使うなど、そういうところでまずは電子の予算を使っていきます。
・植村八潮
公共図書館の館長の会議に呼ばれたときに驚いたのが、電子書籍がコストダウンモデルとしてしか捉えられていないことです。電子書籍は、半分の予算でいいでしょうという声ばかりでした。冊数が倍になると捉えていない。同じ予算で、サービス向上して行かないと電子書籍はどこも作りません。ある、大学図書館の館長は、電子書籍は装備や人件費などで確実にコストダウンになる。その予算を振り分けて、もっと本を買えるという発想をしていました。
電子書籍は、確実に紙とは違ったモデルになるので、予算の振り分けをぜひ考えていただきたいと思います。
・浅野隆夫
図書館も、行政の予算や人事に左右されます。
電子だと、学校に持って行きやすいとか、雇用や観光の事業と組みやすい。図書館が行政の事業に組み合わせていくことで、我々の存在感をもっとアピールできるのではないかと思います。それをやらないで、予算を増やしてくれというのは難しいと思います。
・会場
“Buy it now”は、以前から大賛成です。既に、国会図書館蔵書検索・申し込みシステム(NDL-OPAC)にあります。
民間といわず、国会図書館にリンクを貼る。こうすると、出版界の図書館界に対する目も、一緒にやっていこうという目になれるのではないかと思います。
・会場
図書館で借りて、おもしろければ本屋で買うという人がいます。電子はどんどんコピーしてもいいかわりに、それに応じた対価をもらい、出版社・権利者に行く仕組みにする。レンタルビデオとは違うと思います。こうした方向性を追求するのは難しいんでしょうか。
・植村八潮
だからこそ、民間サービスと公共サービスの分け方があるのだと思います。予算を増やして、本を増やしたら装備代や人件費・場所代がかかってしまう。これこそ、電子書籍が解決する問題です。
今、目の前にいるユーザーの話を聞きすぎていると思います。若い人は、ディスプレイでたくさん読んでいます。その人たちが、10~20年後に本という世界、知識や情報にアクセスするのをどう担保するのか。どう、そこを設計するのかを考えなければいけません。
図書館に来ている人にアンケートを採ってはいけません。図書館に来ているのは、市民の1割程度です。残りの9割の人に対して知識や情報へのアクセスをどうしたらいいですかと聞いて欲しい。9割の人がどうして来ないかということに疑問を持って、そこに電子でどうサービスするのかに議論を持っていって欲しい。
・北川雅洋
既存の図書館ユーザーに聞いただけでは不十分というアイデアには賛成です。
ユーザーの拡大は、日本のためになります。知を出来るだけ多く提供するというのも公共図書館です。
電子書籍のコストメリット以外に、紙では出来ないことに目を向けて欲しいと思います。アクセシビリティにおいて、文字を大きくできるという機能は大切だと思います。誰でも年齢を重ねると、紙に印刷された文字を追うのが億劫になると思います。
また、若年層の方が一日の文字に接している時間が長い。文字を読んでいるといっても、ソーシャルメディアやWebサイト、メールなどが中心です。軽いコミュニケーションで若者に必要な知を得ているとは思えません。
スマートフォンを通してしか、情報にアクセスしない年代層が生まれていることを認識すると、そもそも彼らにはデジタルフォーマットでなければ知を提供することができません。その流れを図書館でも引っ張り込むことで、大きな変化が起こるのではないでしょうか。
・浅野隆夫
実証実験で女子の多い大学の18~19歳にモニターをやってもらいました。やってよかった、図書館や書店に行ってみたくなったと言っています。図書館の利用で、10~20代はほとんどありません。しかし、スマートフォンは四六時中使っています。そのスマートフォンの中に図書館サービスを提供していくのはひとつのやり方だと思います。
【講演終わり】