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電子出版制作・流通協議会



News Letter Vol.011 電流協EPUB 研究部会報告会

2013年03月25日 13:30-15:30
日本教育会館 7階 中会議室(701・702)

講演3

(3)「EPUB3.0の国際デジュール動向、現在協議検討されていることについて」
 講師 村田真様
・日本電子出版協会 技術主任、工学博士

 

■EPUBデジュール標準化とEPUB3.0.1
 ISO/IEC JTC1 EPUB投票解決議会議長になる予定です。
 IDPFの方でも、EPUB3.0.1を作るためにワーキンググループで活動をしています。
 EPUBをデジュール標準にしたいという声は結構強いものがあります。理由は、大きく分けて二つあります。一つは、国際的な普及を加速するためです。もう一つは、国の教育などで採用するためにはデジュール標準は都合がいいためです。ここについては、韓国がとても熱心です。
 フォーラム標準から、ISOやIECに来るのはたくさん例があり、CDのフォーマット・OOXML・ODFなどもそうです。
 誰が、EPUBのデジュール標準化を担うのかでもめましたが、手を挙げた三つの委員会の合同ワーキンググループを作ることになりました。IDPFと合同ワーキンググループの関係ですが、基本的にIDPFが今後もEPUBの拡張を続けます。しかし、EPUB3.0.1.についていうと、IDPFのEPUB 3.0.1とデジュール化されるEPUBは技術的な内容は同じにします。また、最初から国際規格にするのではなく、技術仕様にすることにしました。これは、EPUBが参照しているHTML5やCSSがW3Cの中で成熟していないからです。こういうものは、デジュールにはできません。一度、技術仕様にしておいて、数年後に国際規格化にチャレンジするという制度がISO/IECにあります。今回はこの制度を使います。
 迅速化手続きを韓国から提出してもらいます。これは、一回の投票だけで完了する手続きです。IDPFの事務負担が減り、早期に技術仕様にでき、三つのSCで別の投票結果が出ることを避けられるメリットがあります。
 共同ワーキンググループが技術仕様になった後のメンテナンスを担当します。メンテナンスとは、IDPFの方で変更があったら同じように直す、インターナショナルスタンダードへの格上げ、EPUBのサブセットを作ることです。
 韓国は教育用のサブセット、図書館関係者は長期保存用のサブセットを求めています。

 課題として、縦書き時の文字の向きはUTR#50というユニコードコンソーシアムの仕様に従うことになります。UTR#50が安定して変わらないかというと変わります。今後バージョンが一つ上がりますし、その後は台湾の対応をしたら変わります。こうした不安定なものが、EPUBの文字の向きを決めています。AmazonやKoboがUTR#50と一致したことをやっているかというと、どうも完全に一致はしていないようです。そういう状況で何かすべきかどうか意見をいただければ助かります。
 各国の投票は5月で締め切って、2ヶ月半冷却期間をおいて、各国の代表が集まって投票解決会議を行います。これが9月~10月に行われます。議長は私が務める予定です。これは、SC34とIDPF両方のメンバーであるため、両方から信頼が得られるという理由です。SC34の幹事国は日本で、情報企画調査会が議長を指名します。
 実際には、IDPFですべてのコメントを審議してその結果を持ち込むだけにする予定です。

■EPUB3.0.1
 目的は、バグの対処です。また、参照しているし用が改訂されたのでその対応です。制約事項として、既存のEPUB文書をダメにするようなことはしない。ツールへの影響を最小化することが原則です。

 

問題点

 

IDPF EPUBとデジュールEPUBの同期

 

 6月ぐらいにIDPFとして改訂されたスペックを作ります。デジュール側での投票解決会議の結果を受けて、最終テキストをデジュール側で用意して、IDPF側でRecommended Specificationにします。これが、10~11月頃になると思います。

■EPUBの拡張
 私の立場は、IDPF Advanced Hybrid Layouts WG共同議長です。

 

 拡張とEPUB3の関係

 

 EPUB3.0が本体で、その後に固定レイアウトができました。EPUB3.0.1に固定レイアウトを組み込むことが決まっています。
 今進んでいる拡張は三つあります。Advanced Hybrid Layouts、辞書、索引です。

・Advanced Hybrid Layouts
 今までの固定レイアウトは紙を模倣するだけのものでした。Advanced Hybrid Layoutsは、デジタルの利点を生かしたレイアウトをしようということで、その一つにリフローと連動する固定レイアウトがあります。これは、EPUB以外にも例があって、AmazonやモリサワのMC Bookでもやっています。
 対話的に表示する固定レイアウトは、リンクが張ってあり、自動的に次に表示する情報が付いているものです。日本の携帯向けのマンガが、コマ情報を利用して勝手にスクロールするのもこれの一つです。レイアウトは固定ですが、裏にある情報を使ってもっと分かりやすい表示をするものです。
 複数の固定レイアウトとリフローから最適なものを選ぶというのもあります。一つのEPUBの中に、iPad用・Kindle用・Kobo用の解像度と位置セットが入っていて、画面の向きや解像度を自動判定して最適なものを表示します。
 SVGによるコマ・吹き出し・テキスト領域の表現は、拡張ではなく既にEPUBで可能な部分です。SVGで領域の表現をしていると、どのコマに成人しか見られないものが入っているか、テキストが入っていて翻訳しないといけないという情報が書けます。マンガの管理に使えます。対話的な表示をするときにも、コマビューの遷移などにも使えます。
 こうしたものは既に世の中に存在していて、EPUBの競合品や独自拡張です。これをEPUBの中に入れて欲しいという要望は会員企業から出てきています。

・辞書
 これは、アプリケーションプログラムではないEPUB出版物として表現された辞書や用語集です。EPUB3にコンベンションを付けるだけというイメージです。今までのリーディングシステムに、辞書のスペックに従ったEPUBを読ませたら表示はされますが、辞書引きはできません。
 日本語の表記の揺れに対応するような検索をつけたいとしても、アプリではないのでできません。これまで辞書を作り込んでいる出版者にとっては物足りないと思います。
 一方、ただのEPUBデータなので、いろんなところに持っていけるというメリットがあります。今までなら辞書を作る気にならないようなものでも作ることができます。社内用語集などが簡単に作れます。

・索引
 表示するだけならEPUB3で可能です。索引の検索がしやすいかというと全く別です。今であれば、HTMLでリンクを張るしかありませんが、もっと楽に作成できるようになります。これは、仕様書がつい最近公開されています。

■課題
 EPUB3.0.1およびデジュールEPUB制定へのフィードバックが不十分です。アメリカからは、固定レイアウト拡張に関して意見書を出しましたが、日本の出版社からは何も出ていません。韓国は熱心で、毎年イベントを開いて、IDPFやデジタル教育の標準化の関係者を呼んでいます。
 電書協の要望表は、日本語のためIDPFやW3Cには届いていません。IDPFとCSSワーキンググループの電話会議の際に、日本語組版に対する要望はないのかと言われました。電書協の要望表の話をしました。英訳がないのでは困ると言われ、いまIDPFとW3Cから電書協へ翻訳依頼が出るはずです。もっとみなさんの意見を届く形で送ってください。

【講演終わり】

【本文終了】