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News Letter Vol.011 2013年電流協特別セミナー
2013年02月04日 13:30-15:30
日本教育会館 7階 中会議室(701・702)
■講演2
「2013年電子出版の注目点、EPUBアジアのビジネス展開について」
ePubアジアジャパンリミテッド 代表
辻本英二様
ビジネスの視点から電子出版の注目点をお話させていただきます。米国ではセルフパブリッシングが急拡大しています。一昨年前のデータですが、ISBN発行機関のBowkers社によれば、CreateSpace社だけでも1年間に5万7,000点を超えるISBN付き書籍が、セルパブリッシングで発行されています。フィクションが45%を占め、ジャンル別に見ると、ミステリーやロマンスが上位を独占しています。
セルフパブリッシング・サービスを提供している企業は多数あります。各社ごとに特長を打ち出し、たとえばBookBabyでは、上梓には1タイトル当たり99ドルの費用がかかりますが、売り上げの100%を著者に戻しています。
具体的に提供されているサービスの内容を見てみましょう。ベーシックが 99ドル、スタンダードが149ドル、プレミアムが 249ドルと、ユーザーは三つの商品から選択できます。スタンダードは、挿し絵は10点まで無料、プレミアムにすると50点まで入れられるなど、グレードに応じて商品の差別化をしています。
表紙まわりのデザインに関しては、扱える写真やグラフィックの点数、また初校が出るまでの日数をベーシックは3日、デラックスが2日と差別化しています。校正の回数も1回と2回という差があります。初期費用99ドルと年間19ドルのコンテンツ管理料がBookbabyのビジネスモデルです。
最近の動きとして、ソーシャルとメディアの関わりは無視できない状況になっています。登録者数を見ると、Facebookが10億人を越え、Google+が4億人を越えています。iPhoneのiOS6ダウンロード数は、公開1週間で1億を越えました。
Amazonは会員数を公表していませんが、複数の新聞記事から推測すると、およそ1億5,000万人いるようです。
1月29日の決算発表では、Amazonの年商は約610億ドルに達しています。1ドル 90円で換算して、単純に年商を1億5,000万人で割ると、一人当たり年間36,000円を使っている計算になります。
またAmazonの有料会員「プライム」が1,500万人ともいわれています。あくまで推測値ですが、プライム会員は通常会員に比べ、約4倍お金を使っています。この仮説を元に再計算すると、一人当たり年間25,000円ぐらいになります。Appleは、米国の新聞記事によると4億人を越えたと発表されています。
日本では、書籍や印刷物に消費される金額は、一世帯あたり月に4,000円程度で、ほぼ変化がありません。通信費は、上がり続けています。リアル書店は、書店数が減って売り場面積は増える傾向にあります。クリック&モルタル、リアル書店と電子との部分をどうマッチさせていくかが、大きな課題として挙がってくるでしょう。
米国の電子出版業界で、現在、確実に利益を上げているのは、乱暴に言うと、データ制作を請け負う企業とサーバ提供社だけと言えます。Amazonは売り上げを大きく伸ばし続けていますが、莫大な投資を続けている背景もあり、利益はほとんど出ていません。
実際に米国ベンダーが電子出版事業を始める際、データ制作は、aptara・SPiGlodal・DCL(データコンバージョンラボ)などの企業に委託します。
2011~2012年にかけて、M&Aの視点から企業を見てみましょう。RR DONNELLEY社は、シカゴベースの大きな印刷会社です。ここが、デジタルアセットディストリビューターのLibre DigitalとSequence Personalを買収しました。
Amazonは、ずっと買収を続けてきています。最近では教育とTTSの会社を買収しています。またBPOとして大手だったaptaraが、インドでコールセンター事業をやっているイギリスのienergizerに買収されました。aptaraもインドでデジタル制作をやっている会社で、コングロマリットすることで、単価を落として受注競争に残ろうという戦略です。
SPiGlodalは、フィリピンとインドベースの制作請負会社です。最近では制作だけに留まらず、プロジェクト単位の受注を受けるように営業方針を切り替えています。具体的には、英国図書館の電子化を20ヶ月かけて9億円で請け負うといったプロジェクト受注にシフトしています。
米国で図書館向けシステムを提供するOverDrive社は、クラウド上でHTML5技術にたけていたオーストラリアベースの会社を買収しました。アプリがなくても、ブラウザで有料コンテンツが見られるシステム開発を進めているところです。日本の楽天は、koboを買収しています。
実際のコンバージョン(電子化)と言っている部分に関しては、かなりの量が動いています。データ制作について、DCL社に話を聴くと、電子出版の捉え方が違います。世の中で流通しているテキストの85%は構造化されていないピュアなテキスト。こうしたものを構造化する仕事が多くあります。
具体的には、1991年にオライリー社とHALコンピュータでやっていた、DocBookの資産だったり、オックスフォード大学は未だにTEI(テキストエンコーディングイニシアチブ)のデータだったりします。大学などには結構な量のテキストコンテンツがあり、これらのファイルをEPUBにしたいとか、Amazonで売りたいというニーズです。
企業向けのB2Bのデータ制作では、DTD形式やDTDをよりオープン化したDITA形式など、マニュアルでよく利用されている文書形式のデータをEPUB等にコンバージョンするビジネスも多く見受けられます。
米国ではペンタゴンが大きな予算を持っています。ペンタゴンには、CALSや、2361・38784というミルスペックのドキュメントがあります。これらをEPUB化したいというときには、コンバージョンが必要になります。プログラムなどで自動変換できるものもあれば、人が介在したほうが効率的なものもあります。
製薬業界にも独自の文書フォーマットがあります。たとえば薬の添付文書のドキュメントをスマートフォンのサービスとして提供したい場合には、NLM形式のデータをどう持ってくるかといったことがビジネスになっています。このように、ひとことで文書コンバージョンといっても、種類は結構な数があります。
シスコがコンシューマー向けのトラフィックの推移を予測した調査結果では、今年日本では2,457ペタバイトが電子的に流通されます。2,457ペタバイトというのは、24.4GBのブルーレイディスク換算で、約一億枚の情報量が通信としてやり取りされる計算です。
通信量のほとんどがリッチコンテンツですが、これはコンシューマーだけです。この中の仮に5%としても500万枚、さらにその10%としても、50万枚分のテキストコンテンツが流通されている計算になります。
実際にやり取りされるテキストは、すごい量があります。その中の構造化されていないものが、世の中にはすごくあります。ですからDCLのようなコンバージョンに関しては、日本においても仕事として充分成立する可能性があります。
会社の組織というのは、世の中のニーズを写像した形になっているのが原則だと思います。そういう視点で見ると、業界をリードしている企業の組織図は、業界の顧客ニーズを表していると推測できます。
注目したのは、プリメディアという言葉です。プリプレスは、刷版までの一連の行程の総称です。プリメディアは、まったく違うものです。アウトプットを紙に置いたプリプレス行程を、プリメディアでは流通チャネルの選択も含めてやるというもので、電子出版におけるクリエイティブワーク行程の総称です。
どうしても我々の概念的には、プリプレスのようなものをデジタル化すると考えがちです。しかし、プリメディアは、すべてのプロセスをデジタルだけで完結するようなプロセスで、別組織として持とうとしています。
スピード感を出すために、米国などの場合は、他社とのコラボレーションを積極的にやっていかないといけません。すべてを自社で内省してしまうのは競争に負けてしまいます。
アカウントを作って、登録したのに対して、社内の供業専任チームがオファーに対してどのような対応をするのか。それに対して、初回評価をどのタイミングで戻すのか。LG社は、3週間で戻していますが、ITやWeb企業であれば1週間という話になると思います。初回評価を戻した後に、最終評価をして、コラボレーションを始めます。
電子出版の企業において、米国の中では完成度が上がってきて、既にサバイバルのフェーズに入っています。さらにスピードを高めて行くには、協業を進めて行くしかないというのもあると思います。
今後、日本においても、このようなコラボレーションが増えていくと思われます。
制作とビジネスの観点で電子出版に関しての注目点をお話させていただきます。
米国において、セルフ出版が急拡大しています。一昨年前のデータですが、ISBNの発行数でいうと、クエットスペースだけでも57000点です。その中で、フィクションが45%、ミステリーとロマンスというジャンルが上位を独占している状態です。
具体的にどういう商品があるのかというと、自費出版をやっている会社でAppleの指定代理店になっていたLulu・Bookbabyがあります。Bookbabyの売りとしては、99ドルしかかからず、売り上げの100%を著者に戻しています。
【講演終わり】