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News Letter Vol.006「電子出版アクセシビリティ・シンポジウム」
第二部 アクセシビリティ研究中間発表
・電流協特別委員会 研究部会発表
TTS研究部会
2012年2月13日 13:00-16:45
如水会館 スターホール
発表者:
日立コンサルティング / TTS研究部会 部会長
岡山将也(おかやま のぶや)
TTS研究部会で検討しております研究内容の中間発表を致します。
アクセシビリティを実現するためには、「ユーザビリティ(使い勝手の良さ)」の追求から始まり、視覚障碍者など障碍を持っている方のために物理的バリアを排除する「バリアフリーデザイン」及び、誰でもが利用しやすくするための「ユニバーサルデザイン」を通して、誰でも必要な情報にアクセスできる「アクセシビリティ」に繋がることが重要です。
TTSは、音声合成技術を使った読み上げ技術で、漢字仮名交じりのテキスト情報から、単語間の関連性データを用いて、前後の文脈から正しい読みを生成し、肉声感の高い音声を作るものです。障碍の中でも、視覚・色覚・発達障碍を対象にしています。TTSは読みを制御していますから、点字への転換が可能で、盲聾唖の方も対象になります。
日本の人口の5分の1が65歳以上という高齢化社会になります。視覚障碍者の数は、人口統計調査で約30万人ですが、眼科学会の調査では、矯正視力が0.5未満の方は約165万人います。若年近眼の増加から、今後ますます目の悪い人は増加します。上肢障碍者は57万7千人。高齢者で、緑内障・白内障・老眼で読書に不自由している人も含めると、読書障碍者は1000万人以上になります。通勤ラッシュで本を読めない状況なども含めて考えれば潜在人口は膨大にあります。こうした市場へどういったことができるかを研究部会では検討しています。
研究テーマとしては、次の6つを研究テーマとして掲げ、推進しています。
1.TTS対応電子出版の制作ガイドラインのブラッシュアップ
2.制作における課題の検討(現場でのヒアリング等)
3.電子出版におけるTTS対応における課題の検討
4.音声読上げに関する関連技術の勉強会
5.合同フォーラム/セミナーの企画
6.関係者、支援団体等からの要望や意見の収集
1と2は、総務省に支援頂いて、制作ガイドラインを作成しましたが、実際の制作ラインにどのように利用してもらえばいいかということを検討しています。
3は、日本語特有の問題を検討しています。同形異読語「行った(いった)」と 「行った(おこなった) 」 や、鼻濁音化の有無「株式+会社⇒株式会社(かぶしきがいしゃ)」、助数詞「一本(ぽん)、二本(ほん)、三本(ぼん)」など他にも様々な課題があります。
6は、障碍者の方を集めて、意見や要望などのヒヤリングをして、出版社の皆様にご提供できたらと思っています。
また、特定のトピックスを設けて、音声読み上げ技術はどこまできたのか、どんなことができるのか、発達障碍の子供たちはどのように本を読むのか、音声読上げ関連技術(例えば、SMILなど)についても勉強を行っています。
今後は、研究テーマのエスカレーションとして、音声読上げ用電子書籍(出版)の制作検討に付け加え、オーディオブック制作によるロングテールコンテンツの供給にも視野を広げて行きたいと思っています。
オトバンクの調査で、60歳以上のオーディオブックの利用者が一昨年と比べて昨年は2倍に増加しているとの報告がありました。団塊の世代で、ITリテラシーがあり、可処分所得もあるが、小さい文字の読書が困難という人たちがオーディオブックを好んで読んでいらっしゃるようです。
電子出版の音声読上げ対応の意義についてですが、既存出版事業との共存できるものと思います。さらに、音で聴いた方が、得られる気づきが本よりもはるかに深い。音声を聞ける時間は本より豊富にあります。集中力が本よりも長く続きます。
もちろん、音声コンテンツを作ることは手間がかかるのですが、校正作業にも、TTSを活用することで校正効率が上がると考えています。同時に音声コンテンツを作ることも可能です。
こうしたツールで、SMILやSSML(発音記号列)が作れます。発音記号列は言語処理が不要で、さまざまな人の声で読み上げ、オーディオブックの制作、EPUB TTSとDAISY連動、さらに点字変換などに応用できます。このように、一つのコンテンツ制作が複数のコンテンツに利用できる形が可能となります。
【講演終わり】