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News Letter Vol.006「電子出版アクセシビリティ・シンポジウム」
第二部 アクセシビリティ研究中間発表
・立命館大学IRIS研究発表
「電子書籍アクセシビリティに関する出版社アンケートについて」
2012年2月13日 13:00-16:45
如水会館 スターホール
発表者:
立命館グローバルイノベーション研究機構
山口 翔
青木千帆子
植村 要
今回のアンケートの実施主体は、立命館グローバルイノベーション研究機構プログラム電子書籍普及に伴う読書アクセシビリティの総合的研究に設置されたIRIS出版社アンケート実施チームです。当プロジェクトの研究目的は、読書が困難な人にも読みやすい電子書籍のあり方を考え、その実現のために提言を行うことです。
米国のKindleやiPadで購入した電子書籍の多くが、当初から読み上げ可能ですが、日本では読み上げ対応の電子書籍も端末もほとんど普及していません。このような現状をふまえ、電子書籍と書籍アクセシビリティへの取り組みについて出版社の動向を把握するために電子書籍の出版社に焦点をあててアンケート調査を実施しました。
アンケート対象は、電子出版・制作流通協議会、日本電子書籍出版社協会、電子書籍を考える会、日本電子出版協会の各種団体所属の出版社から、日本出版年鑑2010に掲載されている135社を対象とし、71社(52.6%)から回答を得ました。調査期間は、2010年11月21日~12月31日までとしました。
電子書籍の出版経験は、あるが64社、ないが7社で、90.1%が電子書籍を刊行しています。あると解答した64社が採用したフォーマットは、XMDF 42社、画像PDF 32社、.book 28社、テキスト付きPDFが21社、EPUB 6社でした。
販売しているストアは、多い順にhonto 40社、BookLive! 35社、ReaderStore 32社、GALAPAGOS STORE 32社、パピレス 30社、LISIMO Book Store 29社、紀伊國屋BookWeb 25社、ビットウェイブックス 24社、パブリ 24社、楽天Raboo 22社、BookPlace 20社、Softbank ブックストア 18社、BooksV 18社、TSUTAYA eBOOKs 15社、自社ストアをアプリで提供 13社、Yahoo!ブックストア 11社、VOYGER STORE 9社、パブー 4社、BOOK☆WALKER 4社、BOOKPUB 3社、その他 1社、Discover 0社でした。
このような全体の概要の把握につづき、アンケートの趣旨であるアクセシビリティに関する意識について質問をしました。
「読書障害者のアクセシビリティに配慮した電子書籍を出版する場合、御社はどのような方法で対応、あるいは検討されますか」については、この種の電子書籍の出版を検討していない 27社、関心はあるが、具体的な方法が判らない 21社、電子書籍を音声読み上げ対応のストア販売 14社、個人・図書館等に対し書籍のテキストデータ提供 12社、DRMフリーで販売+支援デバイスで利用 3社という結果になりました。
書籍のテキストデータ提供については、もう一つ質問項目を立てました。紙の本のテキストデータについて読書障害者より提供依頼を受けた経験について、提供依頼を受けてない 54社、受けて提供した 12社、受けて提供しなかった 5社でした。
アクセシビリティに配慮した電子書籍の出版を困難にしている要因(複数回答)は、手間・コスト 47社、著作権処理 37社、アクセシビリティに関する情報不足 29社、ストアが読み上げに非対応 22社という結果でした。
このことから、多くの出版社は手間・コストがかかることを懸念していることがわかります。著作権処理は、現在過渡期であるための複雑さがあります。また、ストアが読み上げに対応していない場合、出版社がいくらアクセシブルな出版物を販売したくてもストアの機能に依存するため販売することができません。
ここで私たちが強調したいのは、書籍のアクセシビリティに「関心があるが具体的な方法がわからない」と回答した出版社に対し具体的な方策を示すことが重要だという点です。この回答をした出版社を含めると、6割以上の出版社が今後書籍のアクセシビリティ向上にむけてアクションを起こすという期待が持てます。
出版社の関心を高め、アクセシブルな書籍販売の実現にこの研究が一助になれば幸いです。
【講演終わり】