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電子出版制作・流通協議会



News Letter Vol.010 「公共図書館のデジタル化」

公共図書館でのデジタル化活用事例、電子図書館導入事例、韓国の先進事例から

2012年11月20日 13:00-14:30
パシフィコ横浜 第八会場 (E206)

「ハイブリッド出版への取り組み」

【講師】
大日本印刷株式会社
 hontoビジネス本部 チャネルソリューションユニット
企画開発第3部 部長
  盛田宏久

・弊社の取り組み
 図書館もしくは大学の視点から説明したいと思います。
 弊社は印刷の技術を広げながら、いろんな製品の開発に取り組んできました。2001年から、印刷技術とITを組み合わせた新たなソリューションを開発し、新しい創発的社会に貢献したいという経営理念の元に進めております。

 生活者のところに図書館や学校が入っています。通常、出版業界のことを語る場合、図書館は利害が衝突する部分もあるので入りませんが、生活者の視点から見ると、人々は書籍を買ったり借りたりしますので、この視点を盛り込んだのがポイントです。

・電子図書館という視点での出版業界の現状
 電子の取次では、図書館向けに電子書籍を販売していいか許諾を取っています。これが、コンテンツを図書館に数多く提供できていない理由です。
 本や雑誌は、10年以上右肩下がりで、少子化や読書に触れる機会の減少が要因だと言われています。
 書店は、10年間で3割減っています。書店が全くない地域が相当数あります。では、お年寄りがAmazonで本が買えるか聞くと、首をひねられる方が相当数います。何か本に触れる機会がないか検討しています。
 日比谷図書文化館では、昨年度図書館内に書店を入れました。千葉大学も「アカデミック・リンク・センター」の図書館に大学生協が入っています。同じ場所で、借りたり買ったりできる。こうしたモデルが、地方も含めて広がって欲しいというのが我々の思いです。

・ハイブリッド書店
 ネットとリアルな書店に、電子と紙をうまく組み合わせて届けていくというのをhontoサービスで推進しています。
 ユーザーは、電子書籍もリアル書店もうまく使い分けています。もう一歩踏み込んで、この本は図書館で借りようか、買おうか、中古でいいかと考える人もいます。この生活者視点で、最適な形を提供できればと思います。実験的な取り組みとしては、札幌市の中央図書館では、図書館に行く人は書店にも行くということで、図書館で電子書籍を体験した人に、書店に行ってもらい関連する地域の書籍を購入すると、コーヒー券を差し上げるという「送客」の実験を行っています。

・我々の取り組み
 東京大学の史料編纂所と、3年かけて社会連携講座という研究を行いました。自治体史をフルテキスト化し、関連する資料の高精細画像をリンクして見せるものです。単純に本を読むより、侍がどういう系譜なのかなど、どんどん深堀ができるようになっていますが、これはコストが非常にかかるので、どうやって捻出するかが課題です。
 電子図書館も進めています。利活用としての電子書籍サービスと、地域・地方をキーワードとして蔵書として持っていただきたいものをデジタル化して配信するものとの二つに分けて電子書籍の中で実現しようとしています。
 現状の電子図書館は、紙の本と同様にデジタル化したものを読んでいただくだけですが、電子では、もっといろんな活用ができるという取り組みも試験的に行っています。学校と連携し、電子教科書で学習し、関連する調べ学習を図書館がデジタル化した資料を活用したりするものです。子供も、全く抵抗がなく、マニュアルも読まずに勝手に使っていく様を見ると、教育・学習という観点で利活用に資するものであると思われます。また、図書館で蔵書をデジタル化する場合、これらの資料が何のために利用されるのか意識しないといけないと感じました。特に、例えば先生が、今後閲覧だけではなく、素材として利用しようとすると、資料作成の部品として使うのは許諾対象です。これらも含めて権利処理をする必要があります。
 最後に、最近、大学生協連合会が学生生活実態調査を出しました。この40年間で書籍の購入費用が73%も減っています。読書時間は、77%も減っています。このような状況を考えますと、紙か電子かという議論以前に、いかに本に触れる機会を作るかを最優先しなければと感じています。

【講演終わり】

【本文終了】